L-RTM成形とは?製法からメリット・デメリットまで徹底解説!
L-RTM成形についてご紹介します。L-RTM成形は、他のFRP成形法と比較して、高品質、高効率、環境負荷の低減といった多くの利点を持つことから、自動車、航空宇宙、建設機械や農業機械などの各産業業機械などの多くの分野で活用されています。
RTM成形とは
L-RTM成形のご説明の前に、元となるRTM(Resin Transfer Molding)成形のご説明いたします。RTM成形は、繊維強化プラスチック(FRP)製品の製造において、繊維を配置した型に樹脂を高圧で注入して製品を形成する手法です。従来の手作業による積層に比べ、RTM成形は自動化に適しており、人的要因による品質のばらつきを抑制し、安定した製品供給が可能です。RTM成形は再現性が高く、小型・中型で複雑な形状の部品を高品質で製造できるため、高強度・高精度な部品の製造に活用されています。一方高圧で注入する成形方法であるため、型の面積に対して型剛性、型締め圧力を調整する必要となり、大型製品には適していません。
L-RTM成形とは
L-RTM(Light Resin Transfer Molding)は、RTM技術をさらに進化させた成形法であり、従来よりも軽量で効率的な製造が可能です。この技術では、下型(CAVI型)にガラス材などの基材を敷き詰め、上型(CORE型)を真空圧を用いて密閉し、低圧で樹脂を注入し硬化させます。低圧注入により型にかかる負担を軽減できるため、高価な型の使用を避け、製造コストを抑制することが可能です。そのため、L-RTM成形は、中小規模の生産や試作品の製作に適しています。
L-RTM成形に用いられる材料と特性
L-RTM成形では、様々な材料を組み合わせることで、多様な特性を持つFRP製品を製造することができます。
・樹脂
・不飽和ポリエステル樹脂:汎用性にすぐれており、安価
・ビニルエステル樹脂:耐薬品性、耐候性
・エポキシ樹脂:機械的強度、耐熱性
・基材
・ガラス繊維:強度、軽量性、耐薬品性
・カーボンファイバー:高強度、高弾性率、軽量性
・コア材
・ウレタン材:軽量・断熱性
・ポリエチレン材:耐水性・耐薬品性
・塩ビ発泡材:難燃性・断熱性
L-RTM成形のメリットとデメリット
メリット
・高品質な表面仕上げ
L-RTM成形では、製品の両面が平滑に仕上げられるため、寸法精度の高さが特長です。
このため、意匠性が求められる製品に活用されています。例えば、自動車の外装部品や、家電製品の筐体など、見た目の美しさが重要な部品にL-RTM成形が採用されています。
・低コスト
L-RTM成形は、金型製作期間の短縮や低圧注入による設備コストの抑制により、製造コストを削減できます。このため、コスト競争力が求められる製品に適しています。
例えば、産業用ロボットアームや風力発電機のブレードに適用されています。
・環境負荷の低減
L-RTM成形は、ガラス繊維の飛散やスチレン臭の発生を抑制し、作業環境を改善できるため、環境負荷の低減に効果的です。
デメリット
・初期投資
L-RTM成形は、ハンドレイアップ成形と比較して、初期投資費用が高額となります。これは、L-RTM成形では、型や樹脂注入装置などの専用設備が必要となるためです。
型は、L-RTM成形において、高精度な成形を行うために、上型と高精度な型が必要となります。
樹脂注入装置も、L-RTM成形には必要な設備です。L-RTM成形では、型内に均一に樹脂を注入するために、精密な制御が可能な樹脂注入装置が必要となります。また、注入圧力や注入速度を調整できる機能も必要です。
他にもL-RTM成形では、真空ポンプ、加熱装置、硬化炉など、様々な周辺機器が必要となります。これらの設備を導入するためには、初期投資が必要となります。
一方、ハンドレイアップ成形は、手作業で行う成形方法であるため、L-RTM成形のような高価な専用設備は必要ありません。そのため、初期投資費用はL-RTM成形よりも低く抑えることができます。
ただし、ハンドレイアップ成形は、人手に頼る部分が多いため、品質のばらつきや生産性の低さが課題となります。また、作業環境の悪化や人材育成の難しさも問題となります。
L-RTM成形の流れ
L-RTM成形における工程をご説明致します。
①型処理(離型処理)
成形品をスムーズに型から取り外すため、型の表面に均一に離型剤を塗布します。
液体タイプ、固形タイプ共にウエス・スポンジ等でムラなく塗布します。所定の時間を置いて離型剤を浸透させた後、ウエス等でしっかりと拭き上げます。拭き上げ工程が不十分だと、製品の型面側にくもりなどが生じ、仕上げ工程に時間がかかります。
②ゲルコート塗装
製品の美観向上や、耐候性・耐久性を上げる為に用いられます。最初の工程で型にゲルコートをスプレーや刷毛等を使用し、均一に塗布します。塗膜が不均一の場合、色むら・ピンホール・ヒケ等の不良が発生しやすくなります。塗膜管理はウェットゲージを使用するのが一般的です。
適切な乾燥工程を怠ると、二次工程の積層に大きく影響します。上記工程を守ることで、最適なゲルコート層を形成することが可能です。
③基布、補強材配置
基布、補強材を設計図に基づき配置します。
④樹脂真空注入
基材を準備した下型に上型を被せます。その際、基材がズレないように注意します。次に型に減圧装置をセットし、型内部を減圧します。減圧状態を確認し、樹脂を注入します。樹脂の投入量は製品により決まっていますが、状況をみて多少の増減は行います。硬化剤添加量は室温と樹脂温度を見て投入量を設定します。注入が完了したら、樹脂ホースを塞ぎ硬化を待ちます。
⑤脱型
樹脂が完全に硬化した後、型を開いて成形品を取り出します。適切な離型処理が施されていれば、成形品はスムーズに脱型され、製品の表面に傷や欠陥を残すことなく取り外すことができます。脱型作業は製品を破損させないように注意しながら行います。四方からバールやくさびを用いて型と製品の接着面を剥がし、垂直に製品を持ち上げ脱型します。
日東電気だからこそ可能なL-RTM成形
多様な成形技術と大型製品への対応力
日東電気は、スプレーアップ、ハンドレイアップ、L-RTM成形など、多彩なFRP成形技術を駆使し、お客様のニーズに最適な工法を選択し、高品質な製品を提供しています。汎用樹脂とガラス繊維を組み合わせたコストダウンの提案や、製品に応じた最適な加工方法の提案など、お客様の課題解決に貢献いたします。
国内外の生産拠点で小ロットから量産までの対応
日東電気は、国内外で生産拠点を構築しております。茨城県磯原工場では、広大な敷地を活かすことで大型FRP製品の製造が可能です。また、ベトナム工場では、常時100名のスタッフが稼働し、量産体制を整えております。L-RTM成形をはじめ最適な製法を選定し、小ロットから量産まで対応いたします。
FRP成形から電子部品実装まで一貫対応
日東電気は、FRP成形に加えて電子部品調達から基板実装、装置内部配線までを自社内で完結している生産体制により、お客様の製品開発をワンストップでサポートいたします。FRP製品の筐体設計から、必要な電子部品の選定・調達、回路設計、基板実装、そして筐体への組み込みまで、全ての工程をお任せください。
事例
浴室用収納カウンター
従来より取引のあるお客様より、浴室用の収納棚に関するご相談をいただきました。 コスト削減をご所望であったため、元々ハンドレイアップ成形で成形をしていた製品でしたが、工数低減が可能であるL-RTM成形への変更を実施を実施しました。
L-RTM成形なら、OEM・EMSパートナーズ.comへ
日東電気は、長年培ってきたFRP成形技術を駆使し、お客様の多様なニーズにお応えする中型FRP製品のご提供をしてまいりました。
少量生産や高精度が求められる製品にも、熟練の技術者による丁寧な作業と厳格な品質管理体制で対応いたします。意匠性が求められる製品にも実績が多数ございます。自動車外装部品や家電製品筐体など、外観性が求められる部品もご用命ください。
FRP製品に関してお困りの方はぜひOEM・EMSパートナーズ.comにご相談ください。