ストロークが長い射出成形のサイクルタイムを短縮!?ラック式金型について解説します!
射出成形において、生産性とコストを左右する重要な要素、それがサイクルタイムです。特に、型開きのストロークが100mmを超えてくるような形状の製品を成形する射出成形では、型開きの動作に時間がかかり、サイクルタイムが長くなる傾向があります。
従来、ストロークが長い射出成形には、型開きに必要な力を確保するために油圧シリンダー式が採用されてきました。しかし、油圧シリンダー式は型開き後に離型を行うため、ストロークが長い射出成形ではサイクルタイムが長くなってしまうという課題がありました。
そこで注目されているのが、ラック式金型です。ラック式金型は、従来のシリンダー式金型に比べてサイクルタイムを短縮して成形できるだけでなく、油漏れのリスクや配線の手間を解消できるなど、様々なメリットをもたらします。
本稿では、射出成形におけるストロークについて、ストロークが長い射出成形にオススメなラック式の仕組みや特徴、油圧式シリンダーとの比較、そして具体的な導入事例などを紹介します。
射出成形におけるストロークについて
射出成形におけるストロークは、成形プロセスの重要な要素です。
型開閉ストローク
型開閉ストロークは、金型が開閉する際の移動距離を指します。この要素は成形サイクルの効率性に大きく影響します。
- 型閉時間:金型が閉まるまでの時間で、射出成形機の型開きストロークと型閉速度に依存します。
- 型開時間:金型が開くまでの時間で、同様に射出成形機の型開きストロークと型開速度に左右されます。
ストロークが長い射出成形について
一般的にストロークが長い射出成形では、型開きの動作に時間がかかり、サイクルタイムが長くなる傾向があります。
この際、以下の点が重要となります
製品への負荷軽減
型開き後の製品取り出し(離型)までの時間が長くなるほど、製品収縮は進行します。そのため離型の際にコアのカジリや汚れの発生リスクが上がります。これを防ぐには、型開きと離型を同時に行い製品への負荷を最小限に抑えることが必要となります。
生産性向上
サイクルタイム短縮は、生産性向上とコスト削減に直結します。特に、大量生産が求められる製品では、効率的な型開き機構を採用することで大きな効果が得られます。
そのためエジェクタのみで離型が困難な金型では油圧式シリンダーが採用される傾向にあります。
油圧式シリンダーとは?
射出成形における油圧式シリンダーは、金型の開閉やスライドコアの駆動、成形品の離型など、さまざまな重要な役割を果たします。以下に、油圧式シリンダーの特徴や用途、メリット・デメリットについて解説します。
油圧式シリンダーの役割
- スライドコアの駆動
油圧シリンダーは、スライドコアを動かすために使用されます。特にアンダーカット構造を持つ成形品では、スライドコアを動かして成形品を金型から取り出す必要があります。油圧シリンダーは大きな力を発揮できるため、複雑な形状の成形品にも対応可能です。 - 成形品の離型
成形品を金型から取り出す際、油圧シリンダーがエジェクタープレートを駆動して成形品を押し出します。この動作はスムーズかつ正確に行われる必要があります。
油圧式シリンダーのメリット
- 高い駆動力
油圧シリンダーは大きな力を発揮できるため、ストロークの長い成形品・大型の成形品や複雑な形状の製品に適しています。
油圧式シリンダーのデメリット
- エネルギー消費量が多い
油圧式は電動式に比べてエネルギー消費が多く、ランニングコストが高くなる傾向があります。 - メンテナンスの必要性
油圧システムはオイル漏れのリスクがあり、定期的な点検やメンテナンスが必要です。
油圧式シリンダーは型の開閉と並行した動作が取れないので、サイクルタイムや油等の漏れのリスク、配線接続の手間などのデメリットもございます。
そこで、今回紹介するのがラック式金型です。
ラック式金型とは?
ラック式金型は、ラック&ピニオン機構を用いて可動側型板を駆動する方式です。ラックは可動側型板に固定された歯のついた棒状の部品で、ピニオンはラックと噛み合う歯車状の部品です。
型締めが完了し製品が成形された後は、型開きが始まります。この時、ピニオンが回転し、それに伴ってラックがスライドすることで可動側型板が移動するため、製品が型開きに合わせて離型されます。
ラック式金型のメリット
ラック式金型は、以下のようなメリットがあります。
- サイクルタイムの短縮
型開きと同時に製品を離型できるため、サイクルタイムを大幅に短縮できます。 - 省スペース化に寄与
シリンダーを必要としないため、金型全体のサイズを小さくすることができます。 - 高ストローク対応
長いストロークの成形に対応できます。 - 成形機を選ばない
油圧や電動に依存しないメカニカルな機構であるため、様々な成形機で使用できます。 - メンテナンス性の向上
油漏れの心配がなく、メンテナンスが容易です。
ラック式金型のデメリット
ラック式金型は、以下のようなデメリットもございます。
- 初期コスト
シリンダー式金型に比べて初期費用が高くなる傾向があります。 - 設計・製作の難易度
シリンダー式金型に比べて構造が複雑なため、設計や製作の難易度が高くなります。
ラック式と油圧式シリンダーの比較
型開き/離型方法 | ラック式 | 油圧式シリンダー |
メリット | サイクルタイムが短い 省スペース化 メンテナンス性 | 駆動力が高い 機器があれば導入可能 |
デメリット | 初期コスト高 設計・製作が難しい | サイクルタイムが長い シリンダーの設置スペースが必要 油漏れのリスク |
ラック式は油圧式シリンダーと比較したときに、サイクルタイムの短縮、省スペース化、メンテナンス性の向上などのメリットがある一方、コストが高く、設計・製作が難しいというデメリットがあります。一方で油圧式シリンダーには、駆動力は高いものの、サイクルタイムが長く、設置スペースが大きいというデメリットがあります。
また、前述の通り型開きのストロークが長い金型において、ラック式は油圧シリンダー式と比較してハイサイクルで成形が可能です。
しかし、成形サイクルを上げることができるメリットは生産量のみではありません。
成形サイクルが伸びると離型までに製品が収縮してしまい、筋や傷が入りやすくなってしまいます。油圧式シリンダーを用いる場合、型開き後にピンを起動させるため、製品にシリンダーで型開きをする時間分の負荷がかかってしまいます。一方で、ラック式は金型を開く段階で離型ができるため、製品に対する負荷が少ないです。
仮にラック式と比較して油圧シリンダー式のサイクルタイムが倍の場合、ラック式が2個取り、油圧式を4個取りの多数個取りの金型にしたとしても、生産量自体はだいたい同じになりますが、製品・金型への負担軽減にもなります。
日東電気はラック式金型の設計製作に対応しております!
ストロークが長い射出成形で使用する金型において、サイクルタイムを向上させたい場合や金型・製品への負荷を軽減したい場合、油漏れのリスクや配線・メンテナンスの手間を軽減したい場合はラック式の金型がお勧めです。
OEM・EMSパートナーズ.comを運営する日東電気はラック式金型の設計製作に対応しております。
また、万が一トラブルが発生した際も、迅速に対応することができます。自社内での修理・メンテナンス体制が整っているため、定期的なメンテナンスや製品形状が変更になった場合においても、短納期且つ低コストで製品のご提供を可能にしております。
定期的なメンテナンスを通じて金型の寿命を延ばし、安定した生産をサポートします。お客様に安心して製品をお任せいただけるよう、万全のサポート体制を提供しています。
日東電気による 金型 設計製作の特徴
試作から量産までの立ち上げをワンストップかつスピード対応
OEM・EMSパートナーズは、プラスチック金型の設計から製作、そして成形に至るまで、一括対応が可能です。この一貫体制により、試作から量産までの立ち上げをワンストップで迅速に対応できます。
全ての工程を自社内で完結させることで、修正対応がスムーズに行えるため、試作期間を1~2ヶ月ほど短縮することが可能です。
成形工程から金型設計へのフィードバックを活かした技術提案
当社は、プラスチック金型の設計から製作、そして成形に至るまで、一括で対応していることを活かし、成形・鋳造工程から金型設計にフィードバックを行っております。そのため、それらのフィードバックやノウハウを活かした成形・鋳造面のことを考慮した設計改善提案が可能です。
また、これらの知識と経験を活かし、製品形状に関する技術提案や、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のバランスが取れたコストメリットのある提案を行うことが可能です。
軽量化や工法変換といったお客様のプラスになる付加価値提案も強みとしておりますので、ご要望以上の対応を実施させていただきます。
修理・メンテナンスも自社対応だから万が一のトラブル対応が迅速に可能
OEM・EMSパートナーズは、プラスチック金型の設計から製作、その後の成形までを全て自社で対応しています。そのため、万が一トラブルが発生した際も、迅速に対応することができます。
自社内での修理・メンテナンス体制が整っているため、定期的なメンテナンスや製品形状が変更になった場合においても、短納期且つ低コストで製品のご提供を可能にしております。
また、定期的なメンテナンスを通じて金型の寿命を延ばし、安定した生産をサポートします。お客様に安心して製品をお任せいただけるよう、万全のサポート体制を提供しています。
様々な分野の新製品開発に貢献
OEM・EMSパートナーズ.comでは、自動車業界や医療業界などの様々な分野のお客様に最適なプラスチック金型を提案しております。そのため、サイズが小さい微細部品の成形金型から大型な金型までの豊富な実績から、お客様への最適な形状・寸法のご提案により、QCDに優れた金型が製作可能となります。
日東電気の金型設計製作事例
フィルター部品
こちらは様々な業界で使用されている濾過フィルター部品です。サイズはΦ80×500mm、成形材質はPPで、従来から取引のあるお客様より、金型製作から量産成形までの依頼を受け対応いたしました。
当該製品は、実際の画像をお見せすることはできませんが、全体は円筒形状となっている一方で、内径部は抜き勾配ゼロ、油圧シリンダーで約250mmのストロークを必要としています。また、製品表面及び内径面にもスレや汚れが発生しないことが条件となっている、非常に成形難易度が高い製品でした。
この問題を解決するために…
プラスチック成形・金型に関するよくある質問
ホットランナーの射出成形金型を検討していますが、イニシャルコストを抑えたいです。なにかいい方法はありますか?
ホットランナーの射出成形金型を検討していますが、イニシャルコストを抑えたいです。なにかいい方法はありますか?
ホットランナーとコールドランナーはどのように使い分けていますでしょうか?
特殊な樹脂材料なのですが、プラスチック成形はお願いできますか?
多数個取りの製品を検討しています。大きさや取り数の参考例があれば教えてください。
プラスチック成形のことなら、OEM・EMSパートナーズ.comまで!
当サイトを運営する日東電気グループでは、プラスチック成形の金型設計から製品成形、金型メンテナンスまでワンストップで対応しております。大手自動車メーカー様向けのバッテリーケースやキャップなどの部品や医療機器や通信機器の各種部品まで様々な業界のお客様に向けて様々な角度から技術提案をいたします。さらに当社では、金型の設計から製品成形、金型メンテナンスまですべて請け負いますので、お客様の調達・管理コストの低減にも努めます。
プラスチック成形のことでお困りの方は、OEM・EMSパートナーズ.comまでご相談ください。