各種ユニット機器のOEMや、電子機器のEMSをグループ内でワンストップ対応いたします。日東電気グループは、OEM・EMSのベストパートナーです。

基礎知識

通信機器用基板の実装におけるポイントとは?

通信機器用基板とは何か?

【定義】 通信機器用基板とは、Wi-FiやBluetooth、5Gなどの通信モジュールを搭載し、無線・有線を問わずデータの送受信を担う電子回路基板のことを指します。

通信機器用基板の役割と一般的な制御基板との違い

製造現場で扱われる電子基板には、大きく分けて「制御基板」と「通信基板」の2種類があります。制御基板がモーターの駆動やセンサー信号の処理を主な役割とするのに対し、通信機器用基板はGHz(ギガヘルツ)帯域の高周波信号を正確に伝送し、外部機器やクラウドとのデータ交換を実現します。

両者の最大の違いは、扱う信号の周波数帯域と、それに伴う設計・実装上の要求水準の高さです。スマートフォンやWi-Fiルーターのような民生機器はもちろん、IoTゲートウェイ、産業用センサー、車載通信モジュール、インフラ向け通信基地局など、現代の製造業では通信基板の需要が急速に広がっています。

通信用途で求められる仕様の特徴

通信機器用基板に求められる仕様は、用途によって幅広く異なります。ただし、自社の製品環境によって必要な仕様レベルは変わりますので、一概には言えない部分もあります。以下の2点が特に重要な観点です。

高周波信号への対応

通信基板では、インピーダンス整合と等長配線の管理が欠かせません。配線の長さや幅、層構成のひとつひとつが回路素子として機能し、わずかな設計ミスが信号の減衰・反射・通信エラーに直結します。5GやWi-Fi 6E対応製品では、配線の長さの違いによるピコ秒単位のスキュー管理が必要になる場合もあります。

防水・防湿・耐振動などの環境耐久要件

屋外設置のIoTゲートウェイや車載通信モジュールでは、電気的な性能に加えて、振動・衝撃・温湿度変化・塵埃への耐久性も同時に要求されます。基板の防湿コーティング(コンフォーマルコーティング)やポッティング処理、筐体との一体設計がセットで問われる場面も少なくありません。

よくある質問

Q.  通信基板と制御基板は何が違いますか?
A.  通信基板はGHz帯域の高周波信号を扱うため、インピーダンス管理や等長配線など設計上の制約が厳しく、実装精度も一般的な制御基板より高い水準が求められます。

通信機器用基板の実装はなぜ難しいのか?

【ポイント】 通信機器用基板の委託には、混載実装・はんだ管理・検査体制の3点で対応力の差が出やすく、委託先選びが品質と納期を左右します。

一般的な実装委託先では対応しきれない3つの理由

実際に調達・購買の担当者から多く聞かれるのは、「複数の条件を同時に満たしてくれる委託先がなかなか見つからない」という声です。通信機器用基板の実装で対応が難しいとされる理由は、主に以下の3点です。

混載実装(SMT+IMT)への対応力不足

SMT(表面実装)とIMT(挿入実装)では、必要な設備・工程が根本的に異なります。SMTはリフロー炉で一括加熱するのに対し、IMTはフロー槽ではんだを流す工程が必要です。両方を1社内で完結できる工場は限られており、「SMTはA社、IMTはB社」と分散発注した結果、工程間の熱管理や品質責任の所在が曖昧になる事例が現場では報告されています。

共晶はんだ・鉛フリーはんだのコンタミリスク

航空・鉄道・電力などの高信頼性用途では、共晶はんだ(Sn63/Pb37)が今でも必要とされる場面があります。しかし鉛フリーはんだと同一ラインで生産すると、微量の鉛が混入する「コンタミ(汚染)」が発生し、RoHS規制対応の製品に鉛が混入するリスクが生じます。専用エリアと専用設備を持ちコンタミを完全分離できる実装工場は、国内でも決して多くありません。

検査体制・品質保証の水準

通信基板では、はんだの高さや傾きを立体的に評価できる3D-AOI(自動外観検査装置)が事実上の標準となりつつあります。2D検査だけでは微細なはんだ不良を見逃すリスクがあり、後工程での手戻りが大きくなります。インサーキットテスト(ICT)やファンクション試験まで含めた多重検査体制を自社内で完結できる委託先は限られています。

複数業者に分散発注することで生まれる管理コスト

「基板実装はA社、筐体ケースはB社、ハーネスはC社」という分散発注体制は、一見リスク分散のように思えます。しかし現場の実態はもう少し複雑です。部品の寸法変更が生じたとき、3社に個別で連絡・確認が必要になり、工程間の調整だけで数日を消費した——という経験をお持ちの担当者は少なくないはずです。

発注形態管理窓口数工程間調整コスト納期遅延リスク品質責任の所在
分散発注(3社)3社以上高(各社個別対応)高(工程間の連携ロス)曖昧になりやすい
ワンストップ(1社)1社低(社内完結)低(一元管理)明確
よくある質問

Q.  混載実装に対応できる委託先はなぜ少ないのですか?
A.  SMTとIMTは必要な設備・工程管理が異なるため、両方を自社内で完結できる工場は限られています。さらに品質保証のための治具設計や検査設備まで含めると、対応企業はさらに絞られます。

通信機器用基板の実装で押さえるべきポイントは何か?

【ポイント】 通信基板の品質は、アートワーク設計・はんだ工程管理・多重検査体制という3つの工程の連携によって決まります。

アートワーク設計段階から実装を意識する

設計と実装を別の会社に分けていると、後から発覚する問題が増えます。アートワーク設計の段階で実装工程を把握している技術者が関与することで、はんだ上がりを考慮したランド形状の最適化や、混載実装時の熱影響を見越した部品配置が可能になります。以下の2点が特に重要です。

インピーダンス整合とパターン設計の連携

高周波信号を扱う通信基板では、配線の特性インピーダンスを50Ωまたは100Ωに整合させる必要があります。基板材料の比誘電率・絶縁層厚・配線幅の3要素を連動して設計し、製造後のTDR測定(時間領域反射率測定)で実測値との乖離を確認します。インピーダンスの要求精度は通常±10%以内ですが、ミリ波帯域では±5%以内を求められる場合もあります。

部品配置と熱設計の整合性

通信モジュールやパワーアンプは発熱量が大きく、隣接部品への熱影響を見越した配置が求められます。サーマルビアを発熱部品直下に多数配置してGND層や筐体へ熱を逃がす設計は、基板単体では完結せず、筐体材質・放熱シートとの組み合わせで初めて機能します。基板設計と筐体設計を同じ窓口で完結させることが、この問題の実質的な解決策になります。

はんだ工程の選定とコンタミ防止管理

共晶はんだ(融点約183℃)と鉛フリーはんだ(融点約220℃)は、融点・濡れ性・コスト・適用規格がそれぞれ異なります。用途に応じたはんだ選定はもちろん、両者を扱う場合のコンタミ防止が品質保証の核心となります。

比較項目共晶はんだ(Sn63/Pb37)鉛フリーはんだ(Sn-Ag-Cu系)
融点約183℃約217〜220℃
濡れ性優れているやや劣る
コスト低い約2〜3倍高い
主な適用航空・鉄道・電力・公共インフラ民生機器・一般産業機器
RoHS対応対象外(鉛含有)対応

検査工程の多重化による品質保証

通信機器用基板では、実装後の検査に複数のアプローチを組み合わせることが品質保証の基本となります。以下の2点が特に重要です。

3D-AOI(自動外観検査)とインサーキットテスト

3D-AOI(Automated Optical Inspection)は、従来の2D検査では捉えられなかったはんだの高さ・傾き・体積を立体的に計測します。日東電気の小山工場では、OMRON製の3D-AOI「VT-S1080-V2」を導入しており、はんだフィレット形状のミクロン単位での検査が可能です。ICT(インサーキットテスト)による導通検査と組み合わせることで、外観と電気的接続を両面から保証します。

ファンクション試験まで含めた一貫検査体制

最終工程のファンクション試験では、完成品として実際の動作確認を行います。試験用治具やソフトウェアを内製できる体制があれば、外注対応に比べてリードタイムを大幅に短縮できます。日東電気では、グループ内の開発部門が試験ソフト・治具・データ収集システムをワンストップで構築した実績があります。

よくある質問

Q.  通信基板の実装で最も手戻りが起きやすい工程はどこですか?
A.  クリームはんだの印刷工程です。印刷不良を早期に3D検査機で検出しないまま後工程へ流すと、リフロー後の修正コストが大きくなります。印刷直後のSPI(はんだ印刷検査)の導入が有効です。

委託先を一本化するとどのようなメリットがあるか?

【ポイント】 アートワーク設計から実装・筐体組立・検査まで1社で完結させることで、工程間の連携ロスをなくし、リードタイム短縮と管理コスト削減を同時に実現できます。

分散発注と一本化発注の違い

分散発注の最大の問題は、工程間の「手離れの悪さ」です。基板実装が完了してもケースメーカーとの寸法調整に時間を取られ、修正が発生すると連絡が3往復になる——こうした状況が、担当者の見えないコストとして積み上がっていきます。

一方で委託先を一本化した場合、仕様変更の連絡は1社への1回で完結します。工程間の調整は受託企業の社内で行われるため、お客様側の管理工数は大幅に削減されます。

試作から量産まで窓口が1社になると何が変わるか

試作段階から量産まで同じ工場が担当することで、量産移行時の手戻りが減ります。具体的には次の2点が現場で実感されやすい変化です。

リードタイム短縮のメカニズム

分散発注では、各社間の受け渡しのたびに搬送時間と確認時間が発生します。同じ拠点・同じ管理体制で一貫生産する場合、受け渡し待ちが発生しないため、工程全体のリードタイムが短縮されます。日東電気では、基板実装から樹脂ケース組立・ファンクション試験まで同一グループ内で完結する体制を構築しており、工程間の連携ロスを最小化しています。

調達・管理コストの削減効果

部品調達においても、複数サプライヤーから個別に仕入れるよりも、実装受託企業が一括調達する方がグロスでの購入単価を抑えられる場合があります。日東電気の事例では、既に量産手配済みの共通部品をお客様へ提案し、コスト低減を実現した実績があります。また、EOL(生産中止)部品の代替品提案も受託企業側で対応するため、お客様の調達担当者の負担を大幅に軽減できます。

日東電気グループのワンストップ対応力

日東電気グループでは、小山工場(基板設計・実装)を中心に、水戸・旭工場(ダイカスト)、日立工場(プラスチック成形)、山手工場(精密機械加工)など計7工場が連携しています。基板と樹脂ケースの組み合わせや、基板とダイカスト筐体の一体製造など、「基板だけ」では解決できない案件にも対応できる点が、単独の基板実装会社との最大の違いです。

対応範囲日東電気グループ一般的な基板実装専業
アートワーク設計◎(自社設計)△〜○(外注対応が多い)
SMT+IMT混載実装◎(専用ライン完備)△(対応可否による)
共晶はんだ(コンタミ防止)◎(専用エリア・専用設備)△(対応可否による)
3D-AOI検査◎(OMRON製VT-S1080-V2)△〜○
ファンクション試験(治具内製)◎(グループ内開発部門)×〜△
筐体組立・ケース調達◎(グループ内で一貫)×(別会社への外注)
EOL部品代替提案◎(80社超の商社ネットワーク)△
よくある質問

Q.  基板実装と筐体組立を同じ会社に頼むメリットは何ですか?
A.  工程間の調整が社内で完結するため、寸法変更や仕様修正の際に連絡先が1社で済みます。搬送待ちや確認往復によるリードタイムのロスがなくなり、品質責任の所在も明確になります。

実際の通信基板実装の事例からわかることは何か?

事例①:振動検知用通信基板(月産500台・ワンストップEMS)

振動をセンシングしてWi-Fiでデータ送信する装置に搭載される通信基板です。月産500台のロットで、アートワーク設計から部品調達・基板実装(SMT・IMT・手はんだ付け)・AOI外観検査・樹脂ケース組立・ファンクション試験まで、すべてを日東電気グループ内でワンストップ対応しました。

項目詳細
対象製品振動検知用通信基板(Wi-Fi送信機能搭載)
生産数月産500台
基板サイズMサイズ(160×140mm)
実装形態SMT・IMT・手はんだ付けの混載
対応範囲アートワーク設計〜部品調達〜実装〜AOI〜ケース組立〜ファンクション試験
特記事項電波法技術基準適合(技適マーク)対応、製品トレーサビリティのクラウド管理

本事例の特徴は、ファンクション試験用ソフト・試験治具・ケース組立治具をグループ内の開発部門が内製設計・3Dプリンタで迅速製作した点です。外注に頼らず試験環境を自社完結で構築できたことで、試作から量産移行までのリードタイムを大幅に短縮しました。また、EOL部品の代替品提案も受託側で対応し、お客様の調達負担を軽減しています。

事例②:データセンター向け高速データ通信基板(試験用・鉛フリー実装)

データセンター向けの高速データ通信基板(試験用)の製作事例です。民生機器用途でありながら高速伝送が求められるため、鉛フリー実装での品質管理が重要なポイントとなりました。日東電気では、N2(窒素)雰囲気対応のリフロー炉と3D-AOIを組み合わせ、高速信号ラインのはんだ品質を全数保証する体制で対応しました。

事例から読み解く:一貫対応が品質と納期に与える効果

2つの事例に共通するのは、「設計・調達・実装・検査・組立」を分断せず、1つの管理体制の下で完結させることで生じる品質の安定と納期の予測可能性です。通信基板は仕様変更が発生しやすい製品ですが、窓口が1社であれば変更指示から反映までのサイクルが短く、手戻りコストを最小化できます。

よくある質問

Q.  試作段階からEMSに依頼することはできますか?
A.  可能です。日東電気では回路図や仕様書の段階からご相談を受け付けており、アートワーク設計から量産まで一貫して対応しています。スタートアップ企業や新製品開発の初期段階でのご相談も歓迎しています。

まとめ:通信機器用基板の実装は委託先の対応力が品質を左右する

通信機器用基板の実装は、インピーダンス管理・混載実装・はんだ種別管理・多重検査など、複数の技術的要件を同時に満たす必要があります。これらを複数の業者に分散発注するのではなく、アートワーク設計から筐体組立・ファンクション試験まで一貫して対応できる窓口に集約することが、品質の安定とリードタイム短縮への近道です。

ただし、どの企業にとっても「完全な一本化」が最適解とは限りません。自社製品の特性・発注ロット・品質要件に応じて、委託範囲を柔軟に検討することが現実的です。

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