電子機器の防水・防湿対策は「基板×筐体の同時設計」で決まる! 他社に断られた案件を解決する一貫製造の考え方
屋外・車載・水処理設備など過酷な環境で稼働する電子機器には、防水・防湿対策が欠かせません。しかし「基板メーカーとケースメーカーに別々に頼んでいるが、品質管理が複雑になっている」「既存サプライヤーに対応が難しいと断られた」という声は、製造現場で今も多く聞かれます。防水・防湿の品質は、コーティング・ポッティング・パッキン・シリコーンコーキングという4つの手法を正しく使い分けるだけでなく、基板とケースの設計思想を整合させることで初めて担保されます。本コラムでは、各手法の特徴と選定基準、そして「基板×筐体の同時設計」によって難易度の高い案件を解決してきた日東電気グループの実績をご紹介します。
電子機器における「防水」と「防湿」の違いとは?
【定義】
防湿とは湿度の高い空気中での耐性を、防水とは液体の水の侵入に対する耐性を指します。両者は対策手法が異なるため、設計段階での混同が品質トラブルの起点となります。
「防水」と「防湿」は似た言葉ですが、現場では別の概念として扱う必要があります。この区別が曖昧なまま設計が進むと、選定した材料や工法が使用環境と合わず、完成後に想定外のトラブルが生じるケースが後を絶ちません。
防水・防湿の定義と、それぞれが必要とされる理由
防水と防湿、何が違うのか
防湿が対象とするのは「湿気」です。高湿度の環境に電子機器を置くと、空気中の水分が基板上で結露し、回路の腐食やショートを引き起こします。一方、防水が対象とするのは「液体の水そのもの」です。雨水・洗浄水・浸水など、より直接的な水分の侵入に対して機器を守ります。さらに「防滴」という概念もあり、こちらは細かい水滴への耐性を指します。iPhoneなどで知られるIP67規格は防水に相当し、JIS C 0920に定められた保護等級によって明確に区分されています。
| 区分 | 対象 | 代表的な使用環境 | 主な対策手法 |
|---|---|---|---|
| 防湿 | 空気中の水分(湿気) | 屋内高湿度環境・梅雨期の工場内 | コーティング処理 |
| 防滴 | 細かい水滴 | 雨がかり・水蒸気環境 | コーティング+パッキン |
| 防水 | 液体の水(浸水・噴水) | 屋外設置・水処理設備・車載 | ポッティング・パッキン・コーキング |
対策を怠った場合に起きること
防水・防湿対策が不十分な電子機器では、腐食による断線、水分侵入によるショート、絶縁抵抗の低下といった故障が発生します。屋外設置の産業機器や車載機器では、これらのトラブルが製品の安全性に直結するため、対策の精度が製品寿命そのものを左右します。ただし、どの程度の対策が必要かは使用環境・ロット数・コスト制約によって異なります。
防水・防湿が求められる代表的な使用環境
屋外環境・車載・水処理施設の3つが特に対策強度の高い典型例として挙げられます。
- 屋外設置機器 雨水・結露・塩害など複合的な要因に同時対応が必要です。
- 車載・特装車向け制御機器 振動環境下でのパッキンへの負荷も考慮が必要です。
- 水処理設備・浄化槽関連機器 常時多湿または浸水リスクがあり、最高水準の防水性が求められます。
- 急速充電装置・EV関連機器 屋外設置が多く、防水と耐熱の両立が課題になります。
Q. 防滴と防水の違いは何ですか?
A. 防滴は霧雨など細かい水滴への耐性、防水は液体の水の侵入そのものへの耐性です。IP規格では等級番号で区別されており、使用環境に応じた等級選定が必要です。
Q. 屋内設置の電子機器でも防湿対策は必要ですか?
A. 必要なケースがほとんどです。工場内の高湿度環境・季節的な結露・空調の温度差による水分付着が基板腐食を引き起こすため、屋内でもコーティング処理を施すことが推奨されます。
防水・防湿対策の主な手法にはどのようなものがあるか?
【ポイント】
コーティング・ポッティング・パッキン・シリコーンコーキングの4手法は、それぞれ保護レベル・対象部位・使用条件が異なります。使用環境から逆算して選定することが品質確保の出発点になります。
現場でよく採用される対策手法は大きく4つに分類されます。どれが正解ということはなく、製品の用途・使用環境・耐熱要件・コスト制約を踏まえた選定が欠かせません。
4つの代表的な対策手法
コーティング処理(防湿・軽度防水)
基板全体をシリコン・フッ素・ウレタン・アクリルなどの樹脂で薄膜コーティングする手法です。湿気や腐食から基板を保護することを主目的とし、軽度の防水にも有効です。日東電気では蛍光塗料入りコーティング材を採用しており、施工後にブラックライトを当てることで塗布漏れの有無を目視確認できます。これにより、人的ミスに起因する品質ばらつきを工程内で抑制しています。
ポッティング処理(高防水・密閉)
基板をケースに組み込んだ後、ケース内に樹脂を流し込んで完全に密閉する手法です。外部からの水・粉塵・衝撃に対して非常に高い保護性能を発揮します。一方で、一度硬化した樹脂は除去が困難なため、修理・部品交換を想定する製品には不向きです。水処理施設や浄化槽内に設置される機器など、メンテナンスより信頼性を優先する用途で採用されます。
パッキン・Oリングによる封止(筐体レベルの防水)
筐体の合わせ面にゴム製パッキンやOリングを挟み込み、物理的に水の侵入経路を塞ぐ手法です。基板コーティングと異なり、筐体レベルで防水ラインを形成します。ただし、高温・高熱環境ではゴムの劣化が早まるため、使用温度範囲の確認が必須です。
シリコーンコーキング(耐熱・防水・防湿)
高温・高熱を発する機器でゴムパッキンが適さない場合に用いる手法です。シリコーンジェルや防水レジンを筐体の合わせ面や隙間に充填することで、耐熱性と防水・防湿性を同時に実現します。日東電気では自動機設備によるシリコーン塗布ラインを導入しており、人手に頼らない均質な施工が可能です。
使用環境別の手法選定ポイント
4手法のいずれを選ぶかは、使用環境の過酷さ・耐熱要件・修理の有無を軸に判断します。
| 使用環境 | 推奨手法 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 屋内高湿度・工場内 | コーティング処理 | 軽度の防湿で十分なケースが多い |
| 屋外設置・雨水対応 | コーティング+パッキン併用 | 二重対策で防水レベルを確保 |
| 車載・振動環境 | シリコーンコーキング+筐体強化 | 振動によるパッキン劣化を防止 |
| 水処理施設・浸水リスク | ポッティング処理 | 完全密閉で最高水準の防水性を担保 |
| 高発熱機器(屋外) | シリコーンコーキング | 耐熱性とパッキン代替を両立 |
Q. コーティングとポッティングはどう使い分ければよいですか?
A. コーティングは防湿・軽度防水が目的で再作業性が高い用途向け、ポッティングは浸水リスクが高く修理を想定しない製品向けです。使用環境の水分リスクと保守性の両面から判断します。
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なぜ「基板とケースを別々に発注する」と防水・防湿の品質が下がるのか?
【ポイント】
防水・防湿の品質は基板とケースの「設計思想の整合性」で決まります。別々に発注する構造は、その整合を損なう最大の要因です。
「基板は基板メーカーへ、ケースは成形メーカーへ」という分離発注は、製造業では珍しくない慣行です。しかし防水・防湿という品質要件においては、この分離が致命的な齟齬を生む構造的リスクを内包しています。
基板メーカーと筐体メーカーが別々だと生じる3つの問題
仕様すり合わせの工数と齟齬リスク
基板のコーティング仕様とケース側の封止構造は、互いの寸法・材質・施工タイミングを前提として成立します。発注先が別々の場合、両社の仕様は個別に定義されるため、組み合わせた際に「ケースの溝形状がパッキン寸法と合わない」「コーティング後の基板厚みがケースの嵌合に影響する」といった問題が試作段階で発覚するケースが現場では多く見られます。こうした手戻りは、リードタイムと開発コストの双方を押し上げます。
責任の所在があいまいになる品質問題
防水試験で不合格となった場合、原因が「基板のコーティング不足」なのか「ケースの封止不良」なのかを切り分けるのは容易ではありません。基板メーカー・筐体メーカーがそれぞれ「自社の仕様は満たしている」と主張し、品質責任の所在があいまいになる事態は珍しくありません。一概に分離発注が悪いとは言えませんが、防水・防湿という統合的な品質要件には構造的に不向きです。
「断られた案件」が生まれる構造的な理由
防水・防湿の難易度が高い案件が既存サプライヤーに断られる背景には、技術的な限界以上に「対応範囲の壁」が存在します。基板実装のみを手がけるメーカーは、ケース側の設計変更を提案できません。逆にケースメーカーは基板の施工条件を考慮した設計変更を行う動機が生まれにくい。この分断が「どこに頼んでも解決しない」状況を作り出しています。
日東電気グループにお問い合わせいただく案件の中にも、「複数社に断られた」というケースが一定数あります。そのほとんどが、基板とケースの両面からアプローチすることで解決できる内容です。
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Q. 防水・防湿対応を断られるのはどのようなケースですか?
A. 基板コーティングとケース封止を一社で完結できないメーカーへの依頼が最も多いパターンです。難易度の高い二重対策や耐熱・防水の複合要件は、専業メーカーには対応できないことがあります。
日東電気が「基板×筐体の同時設計」で解決できる理由とは?
【ポイント】
基板実装(小山工場)・プラスチック成形(日立工場)・ダイカスト(水戸工場)を社内に持ち、設計思想を一気通貫で共有できる体制が、他社に断られた案件を解決する根拠です。
日東電気グループが防水・防湿案件を一貫して解決できるのは、技術力だけが理由ではありません。基板とケースを同じグループ内で同時設計・同時製造できるという「仕組みの構造」が、品質と効率の両方を支えています。
3工場連携という仕組みがもたらす設計の自由度
| 工場 | 担当領域 | 防水・防湿における役割 |
|---|---|---|
| 小山工場(基板実装) | 基板設計・SMT/IMT実装・コーティング | 蛍光塗料入りコーティング施工・品質検査 |
| 日立工場(プラスチック成形) | 樹脂ケース設計・射出成形 | 防水封止構造の設計・パッキン溝形状最適化 |
| 水戸工場(ダイカスト) | アルミ・亜鉛ダイカスト筐体 | 高剛性ケースへのシリコーンコーキング施工 |
重要なのは、これら3工場の間を「技術営業本部」が橋渡し役として機能している点です。基板側の施工条件とケース側の形状設計を同じ組織内でリアルタイムに調整できるため、分離発注では生じていた仕様齟齬が構造的に発生しにくくなります。
📌 関連パートナーサービス
- 基板×プラスチックケース 一貫製造|基板からケースまで設計・製造を一気通貫で対応
- 電子機器EMS|基板実装〜筐体組立までワンストップ対応
VE提案と自動機設備が品質とコストを両立する理由
一貫製造体制が持つもう一つの強みは、VE(バリューエンジニアリング)提案の幅広さです。たとえばモバイルカー向けのダイカスト筐体案件では、ゴムパッキンが使用できない高発熱条件に対し、シリコーンコーキングへの変更を提案しました。さらに筐体にガイドピン・ガイド穴を設けた勘合構造を採用することで、ネジの本数削減による組立工数の削減と防水・防塵性能の向上を同時に実現しています。こうした提案は、基板とケースの設計を同時に把握しているからこそ可能です。
蛍光塗料入りコーティングが担保する品質可視化
品質確保の仕組みも他社との差別化要素です。日東電気ではコーティング材に蛍光塗料を混合し、施工後にブラックライトを照射することで塗布漏れを目視検査しています。コーティングの「塗れている・塗れていない」は通常の外観検査では判断が難しく、見逃しが製品出荷後の不具合に直結します。この工程内品質確認の仕組みは、量産段階での安定した品質を担保するうえで現場の信頼を得ています。
Q. 一貫製造とバラバラ発注では何が具体的に変わりますか?
A. 設計の整合性・品質責任の所在・手戻りコストの3点が変わります。一貫製造では基板とケースの仕様を同時に調整できるため、試作段階での齟齬が生じにくく、リードタイムの短縮にも繋がります。
実際の導入事例:どのような課題が解決されたのか?
日東電気グループが実際に対応した3つの事例を紹介します。いずれも「基板とケースの同時設計」というアプローチが解決の核心にありました。
事例1:急速充電装置用基板|他社に断られた防水・防湿案件をワンストップで解決
あるメーカーから持ち込まれた急速充電装置用基板の案件は、既存メーカーに「防水・防湿対策が困難」と断られた経緯がありました。屋外設置を前提とした高い防水要件と、量産時の品質安定という2つの条件が壁となっていました。
日東電気では、基板には蛍光塗料入りコーティングを施工し、ケース側には特殊防水・防湿塗装を実施する「二重の対策」を提案しました。基板とケースを一社で同時設計・同時製造できるからこそ、両者の施工仕様を整合させたうえで量産対応まで一気に進めることができました。
事例2:特装車用ゲート制御基板|振動環境下での防水・防塵をケース同時設計で実現
床下格納型テールゲートリフターに使用されるゲート制御基板の案件では、車両振動への耐久性と防水・防塵性能の両立が求められました。月産200台のロット規模での安定した品質確保も条件でした。
日立工場で樹脂ケースを設計・製造し、上蓋と下部の勘合構造にネジ留めを組み合わせて強度を確保。さらに自動機設備を用いたシリコーン塗布により防水・防振用のシール施工を行いました。基板側のインサーキットテスト(ICT)も小山工場で実施しており、製品全体の品質確認を一社内で完結しています。
事例3:モバイルカー向けダイカスト筐体|耐熱要件に対応したシリコーンコーキング提案
屋外仕様のモバイルカー向け製品では、製品自体が高熱を発するためゴムパッキンの使用が適さないという制約がありました。防水・防湿は必須でありながら、一般的な封止手法が使えない難易度の高い案件です。
水戸工場のダイカスト筐体を採用し、耐熱・防水・防湿を実現するシリコーンコーキングを提案。さらにダイカストケースにガイドピン・ガイド穴を設けた勘合構造とすることで、ネジ本数の削減による組立工数の削減と防水・防塵性能の向上を同時に実現しました。
📌 防水・防湿タグの製品事例をまとめて見る
Q. 屋外・車載用途の電子機器でも対応可能ですか?
A. はい、対応可能です。車載・特装車・屋外設置機器の防水・防湿案件の実績が複数あります。使用環境・発熱条件・ロット数をご共有いただければ、最適な手法を提案いたします。
まとめ:防水・防湿対策を「基板×筐体」で同時に考えるべき理由
本コラムでは、電子機器の防水・防湿対策における4つの手法、分離発注がもたらすリスク、そして一貫製造体制がその課題をどう解決するかを解説しました。
防水・防湿の品質は、基板単体でもケース単体でも担保できません。両者の設計思想が整合して初めて、使用環境に耐える電子機器が完成します。「既存メーカーに断られた」「基板とケースを別々に頼んでいて品質管理が複雑になっている」といった課題をお持ちの方は、日東電気グループのワンストップEMS体制をご活用ください。
- 防水・防湿の定義と手法を正しく区別できているか
- 基板とケースの仕様が整合した状態で設計・製造されているか
- 品質責任の所在が明確な発注体制になっているか
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